貧血、健康診断のメリット

貧血は血液の中の赤血球の数や割合(ヘマトクリット)、血色素量などが減る事なのですが、

貧血と言われても色々な原因があります。

最近、貧血の症例が重なったので思う所を書きます。

 

動物の貧血の指標は血液中の赤血球の割合(ヘマトクリット)でまず判断します。

人では血色素量(ヘモグロビン)ですか。

基準値(≒正常値?)は犬では37-55%、猫では32ー45%です。(測定方法、機器により多少値は変わることがあります。)

 

以下貧血の症例です。

 

猫の出産に伴い子宮脱(子宮が陰部より靴下を裏返すように反転して飛び出してしまう)がありました。

出産での出血、子宮が飛び出してしまった事による出血でヘマトクリットは17%でした。

これは見た瞬間にこれが原因と言うのがわかるので、原因の特定は容易です。

(整復して数カ月後、回復後に避妊手術をしました。)

 

他の猫の貧血の症例では出血などは見当たらないのにヘマトクリットが11%でした。

この子はいわゆる猫エイズが陽性で、よく調べるとヘモプラズマと言う細菌感染よるものでした。

(残念ながら後にお亡くなりになられたそうです)

 

犬で急にフラフラしたとの事なので調べるとヘマトクリットが38%でした。

基準値内だから貧血ではないと思われるかもしれませんが、この子はフィラリア検査時に数回健康診断をしていて、その時は45%前後です。基準値内でも貧血傾向があると判断しました。

精査をすると、脾臓に腫瘤が2個見つかりました。

もしかしたらここから腹腔内に出血があったのかもしれません。

 

④※

犬で、発情中だが食欲元気がない、とのことでした。

検査をしするとこの子のヘマトクリットは37%で基準値内です。

でも、元気な頃に健康診断はしたことが有りません。なので普段から低いのか比較対象がありません。MCV(後述)は低値でした。

 

犬で3日前から食べない。下痢、嘔吐もすこしある。

ヘマトクリット19.8% 上澄みが赤く溶血していて血小板も少ない状態でした。

 

①③④(④は多分※後述)出血性貧血です。

②は慢性(?)の溶血性貧血です。

⑤は免疫介在性溶血性貧血ならびに血小板減少症です。

 

貧血を鑑別する時に必要になるのが赤血球の大きさ(MCV)と赤血球の中のヘモグロビンの濃度(MCHC)です。

 

基準範囲はMCV 犬で60-77 猫39-55(fL) MCHC 犬32-36 猫31-35(g/dL)です。

 

例えが良いのかわかりませんが、MCVは浮き輪の大きさ(赤血球は浮き輪の穴を塞いだ感じの形です)、MCHCは浮き輪に入っている空気の中に酸素がどのくらい入れらるか、です。

 

ただ、これは基準値であって、動物の個体によっては健康な時でも外れている事があります

 

実は、ここまで長々と書いたのは症例報告がしたかった訳ではなく健康な時数値を把握しておいて欲しい、把握させてください、と言うことです。これは健康診断の大きなメリットです。

 

当院に来院して頂いている犬では(フィラリア検査時に健康診断的に血液検査をする事が多いです)MCVが大きい子、小さい子が何頭かいます。

例えば50くらいの子、47位の子、57位の子、77位の子など。

一般的に秋田などは小さい事があり、プードルは大きい事があるといいますが、柴なんかも小さい子が多い気がします。

 

でもこの子達は病気では有りません。もともと遺伝的に小さいかったり大きかったりするのです。もちろん貧血もありません。

MCVが小さい子では赤血球数は逆に多い印象があります。

また、小型犬などは健康診断の時に逆にヘマトクリットの高い子が多く見られます。常時68%位の子がいます。

 

正常な時に77flの子が60flになったら、逆に50の子が60になったら、数値は同じで基準範囲内でも異常が起きているかもと疑います。

同じ数値でもかたや通常より浮き輪が小さくなっている、かたや通常より浮き輪が大きくなっている、、解釈が真逆です。

 

白血球数も同じく多めの子、少なめの子がいます。

キャバリアなどは血小板が少ない子が居ます。

 

肝臓の数値、腎臓の数値、血糖値など年一回、二年に一回でも測ってみませんか?

 

猫はフィラリア検査がないのですが、健康診断はおすすめしています。

 

尿検査もおすすめします。

 

 

もっと詳しい血球計算が出来る機械も出ているのですが、高いのでまだ導入できていません。導入するかもわかりません。

もちろん欲しいのですが。

(PS 2022/01 2022年2月に導入しました)

 

※④

この症例に関しては発情に伴う貧血もあるのでしょうが、何か判然としない、回復も芳しくないので

後に検査を進めると、甲状腺機能低下に伴う貧血でした。

甲状腺ホルモンを内服していただいてからは徐々に貧血は改善されましたが、MCVは基準値以下のままです。多分、元来低値の犬なのだと思います。(柴犬です)